宮崎県新富町の蕎麦

しんとみの郷インタビュー

宮崎空港から北に車で約30分、宮崎県の中部に位置する新富町。

東京ドーム約460個分の広大な農地を有し、米・ピーマン・キュウリ・トマト・ズッキーニ・マンゴー・メロン・ぶどう・キンカンなど様々な作物が取れる日本有数の農業地域である。

そんな新富町の商店街に、「しんとみの郷」というお蕎麦屋さんがある。休日には、町外からも多くのお客様が訪れる人気店だ。そこでは、宮崎県新富町産のそば粉で作られた蕎麦が提供されている。新富町は蕎麦の産地でもあるのだ。

地域課題から生まれた蕎麦の6次産業化

この蕎麦屋さんを運営しているのは、NPO法人しんとみの郷という団体だ。生産・製粉・加工・販売まで、地域で生産される蕎麦の六次産業化を実現し、地域経済の活性化を目指して設立された。

元々、宮崎県新富町では、お米作りをする農家さんが田んぼの雑草対策として、お米と蕎麦の二毛作を行っていた。蕎麦は本来、湿地での生産に適した農作物ではないため、蕎麦生産単体での収入アップは容易ではない。

そこで、地域の農家さんたちが自分たちの蕎麦の付加価値を高めて売るというきっかけをつくりたいという想いから、六次産業化の実現を目指して設立したと、NPO法人しんとみの郷の代表・中下和幸さんは伝えてくれた。

口蹄疫という危機からの脱却

中下さんは、新富町地場産業振興会の会長をされており、以前から蕎麦生産者からの相談を受けていたという。そんな時に起きたのが、2010年に宮崎県内で流行した家畜の口蹄疫だ。宮崎県新富町も、大きな影響を受けた。

地域の産業振興と経済活性化を目指し、新富町は蕎麦に掛けた。生産者から相談を受け、彼らと共に中下さんは宮崎県内の蕎麦先進地である椎葉村へと視察に出向いた。

経済を動かし地域に還元する

中下さんにとって、地域の資源を活かし、地域の経済を動かすことで、地域に還元するということが自身の課題だったという。

蕎麦で高付加価値を提供するには、技術力が必要だと実感しました。生産する技術だけでなく、製粉の技術もそば打ちの技術も。

その上で、農家さんが高齢化する中で、農家さん自身が自分の蕎麦をお客様に直接提供する未来を目指し、モデルケースとして「しんとみの郷」という蕎麦屋も運営しています。

中下さんは、自らこの言葉を実践している。今でも、朝4時から蕎麦を製粉し、自ら蕎麦打ちをしている。まずは、自分たちがチャレンジし、そして、後継を地域と共につくろうとしているのだ。

蕎麦が地域を元気にする

しんとみの郷では、蕎麦の製粉・加工・販売だけではなく、蕎麦打ち体験なども実施し、年間200人以上の参加者を集めている。お店のスタッフも、蕎麦打ちを行うようになっている。

今では、お店で3人が蕎麦を打てます。製粉だけは、蕎麦の状態を見ながら機械や工程を調整しながら行うため、まだ私が行っています。

将来的に、新富町に蕎麦屋さんがもっとできて、蕎麦生産者さんももっと販売や飲食店運営まで関わっていってほしいです。それが、農家さんにとっても、成長するチャンスになればと思っています。

中下さんは、蕎麦という地域資源を活かして経済を動かし、生産者に還元される仕組みをつくり、次世代へつなげていく未来を描いている。